「30代は老後の年金をあてにできない」は本当か お金の不安がある人ほど年金制度を信じない

人生100年時代、老後への備えは20代、30代から始める必要がある。そのためにも、年金の基本を知っておきたい。

未来に思いをはせるとき、お金のことを避けて通ることはできません。

 

最近では若い世代の相談が増えているそうです。背景には、つみたてNISA 少額投資非課税制度)が始まったこと、イデコ(個人型確定拠出年金)が知られるようになったことがあると思います。しかし、大きな動機は、やはり「人生100年時代」ということでしょう。かつて「老後2000万円不足問題」もありましたね。長く続く老後、お金がいつまでもつのか心配になる人も多いことでしょう。

 

1990年生まれの人が90歳まで生存する確率は男性が44%、女性は69%です。女性が100歳まで生きる確率は20%5人に1人だそうです(厚生労働省「完全生命表」「簡易生命表」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口〈2017年推計〉」より試算)。「長生きリスク」は確かに存在しますね。末長く、幸せに安心して生きていくために、お金の問題をどう解決していけばいいのでしょうか。

 

老後のお金が不安な人に共通する「誤解」

実は、人生のお金について不安を抱く人に共通する「誤解」があります。

それは「将来公的年金はもらえないのではないか」「もらえたとしても、ほんの少しに違いない」と信じ込んでいることです。そのために、民間の個人年金保険に入って高い保険料を払っている人もいます。まずはその「誤解」を取り除くこと。

 

長生きリスクをヘッジするためのいちばんいい方法は、「公的年金を増やすこと」です。例えば夫婦2人、毎月お給料から厚生年金保険料を天引きされていますから、すでに人生にビルトインしていますね。モデル年金額(夫が厚生年金に加入して男性の平均的な賃金で40年間就業し、その配偶者が40年間専業主婦であった夫婦に給付される夫婦2人の基礎年金と夫の厚生年金の合計額)は約22万円ですが、会社員夫婦の場合は、ともに「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」を受け取れますので、より多い金額が期待できます。

公的年金保険は働けば働くほどメリットがあるように制度設計されていますので、夫婦で長く働き続けることによって受け取る年金額も増えていきます。毎月保険料を納めることで、給付を受ける「権利」を得ているとイメージしておいてください。出産育児をすることになっても仕事をやめないで続けてくださいね。

 

実は、「お金の人生設計」のスタートは、生活の基盤となる公的年金を正しく理解することなのです。「えっ、年金には心配しかなかった」「年金ってわからない」という社会人20年生、30年生の方々もいらっしゃるかもしれません。ぜひ、基本的なことを理解しましょう。

 

そもそもですが、「公的年金保険」は、自分だけでは準備しきれないことを、社会全体で備え、支えていく制度です。たとえ何歳まで生きようが、亡くなるまで年金は受け取れます。ケガや病気、死亡も障害年金や遺族年金でカバーされます。公的年金制度は「保険」なのですね。

民間の「個人年金保険」は「保険」と名前がついていますが、「貯蓄」です。自分で積み立てた保険料を一括して、あるいは10年間などの期間で受け取ります。コストが高い分、割の悪い「貯蓄」といえるでしょう。

 

「年金がもらえなくなる」ことは絶対にない

公的年金は、少子高齢化を見据え、将来にわたって制度を維持できるように制度が作られていますので、年金がもらえなくなるということは絶対にありませんから安心してください。

年金制度は、現役世代が納めた保険料を、そのときの年金受給者へ仕送りをする仕組み(賦課方式)です。将来、物価がどれくらい上がるかはわかりませんが、商品やサービスの値段が上がっているのに受給金額が変わらないと生活が苦しくなりますね。公的年金は仕送り方式ですから、物価が上がったときは一般的には現役世代の賃金もその分上昇するので、年金額も物価上昇にある程度連動して増えることになります。

それに、年金の財源は保険料だけではなく、基礎年金の2分の1は国庫負担です。保険料の一部は積立金として運用し、将来の給付に充てることができるようになっています。

若い世代が払う保険料率は固定され、負担がどんどん増えることはありません。そのうえで、今の年金の給付水準は財政に合わせて自動的に調整され、若い世代も将来一定以上の年金が受け取れる仕組みなのです。

ちなみに、自分で積み立てしていく個人年金保険は積立方式です。契約時に将来受け取る額を約束します。これから30年間保険料を払い続けたとしても、インフレによってその価値が大幅に減少してしまうかもしれません。

 

2021(令和3)年度の年金額は、2020(令和2)年度に比べて0.1%の減額改定になりました。4年ぶりの減額改定です。国民みんなが受け取れる1階部分の老齢基礎年金の満額(40年保険料納めると満額です)は、「法定額78900×改定率」で毎年改定します。改定率を掛けることで、すごく簡単にいうと、世の中の賃金や物価が上がれば上がり、下がれば下がることになります。

今までは、給料は下がっているのに、なんで年金減らないの?という状況だったのですが、令和3年度は新しいルールが適用されて、賃金下落分と連動させて年金も減額となったのです。これは現役世代の負担増を抑えるためです。

 

公的年金と自助努力の「両輪」で老後資金を賄う

年金は、今の年金受給者の年金額を少し減らして、将来世代のために貯蓄しておく仕組みになっているということをもう少しお話しましょう。

今後、賃金や物価が上がった場合は年金額も上がりますが、「マクロ経済スライド調整」という仕組みがあって、その増え方は抑制されます。少子高齢化を見据えての対策です。年金をもらう高齢者も年々少しずつ長生きになっているのと、保険料を支払う現役世代の人口が減ることを計算に入れて考えられているのです。だから、将来、若い世代が受給できる年金が過度に減ってしまうということはありません。ちなみに令和3年度は改定率がマイナスなので、マクロ経済スライドは発動せず未調整分(▲0.1%)は翌年以降に繰り越しとなります。

でも、年金だけで老後の生活を賄おうとすると、買いたいものを我慢しなくてはいけないかもしれません。豊かさをキープするために、自助努力で「貯蓄」をすることが必要です。

今後のさまざまな出費も考え、ライフプランに沿った「お金の人生設計」を立て、確定拠出年金とつみたてNISAも活用して、ゆっくりコツコツ資産形成していくのも一つの手です。「人生100年時代」の資産形成は、「長く働いて受け取れる公的年金をなるべく増やす」こと、そして「自助努力で資産形成をする」こと。その両輪で進めることがポイントです。

『人生100年時代、介護は「25年」もの超長期戦、 親子共倒れを防ぐために重要なことは一体?』

「長寿化の影響で、介護の期間も長期化しています。親子共倒れにならないためには何が必要なのでしょうか?」

高齢化社会の今は、親も自分も100歳まで生きる前提で考えておくのがベター。子どもが親の介護に「時間」も「お金」もガッツリ費やした場合、自分が老後を迎えた際に破綻が待っている……という可能性もゼロではありません。そんな現代の介護では、自分の「時間」と「お金」を守ることが大切であり、さまざまな制度やサービスについて知ることが重要です。

 

「自分の時間とお金は確保すべし」

自分の子どもが成人して一段落ついたとホッとした頃、親の様子がなんとなくおかしい、という人が多くなりますよね。

そうなんです。子育ての手が離れた頃に、親から「ちょっと転んだ」「腰が痛い」など、ちょくちょく呼ばれることが増えてきます。何でも、「はいはい」と聞いてしまうと、子ども自身の身がもたなくなります。

でも、今まで育ててくれた親には、できる限りのことはしてあげたいと思うのは当然な気もしますが。

いいえ、そこでいいかっこうをするのは、禁物なんです。たとえば、自宅から実家まで、片道1時間とします。毎週実家に通っていると、往復2時間、1年に換算すると、100時間以上にもなります。もし子どもが50歳、親が75歳だとすると、人生100年時代だから、これがあと25年は続くんです。

しかも25年後、子どもは75歳だ。とても体がもちません。

交通費だって片道1000円なら往復2000円。1年で約10万円。25年で250万円。

250万円って……新車1台分より高いじゃないですか!バカにならないですね……

「親子共倒れを防ぐために重要なことは一体何か」

 

子どもだって、100歳まで生きるんです。その老後資金の250万円が、親のための交通費に飛んでしまうんです。子どもが老後破綻になることだってなくはないです。

まさに、親子共倒れ……

介護は「就職」「結婚」「出産」と同じライフステージのひとつと考えて、親には、お金も気持ちも自立してもらって子どもはドライに割り切ることが大切なんです。

でもやっぱり親のことを見捨てるなんてできない……

そこで、上手に活用したいのが「介護保険サービス」や「自治体が独自に行うサービス」です。美味しいご飯が食べたいならレストランに行くように、プロのヘルパーさんや、地域のボランティアサービスをどしどし利用しましょう。親の介護をきっちりサポートしてくれます。

親の介護は、親のお金でプロのサービスを使い倒す。プロに任すことで、子どもは自分の時間を確保することができます。

 

「はじめにやるべきは介護体制作り」

親の介護って、やっぱり子どもが全面的にやらなければいけないって思ってしまうのですが。離れて暮らしていると難しい。

親に介護が必要になったら、介護の体制作りをまず考えます。介護を「ひとつのプロジェクト」と考え、サポートできる人たちをそのメンバーと考えます。

みんなが親の介護というプロジェクトのために一致団結するってことですね!

参加するメンバーには、まずは、介護の中心を担う「主たる介護者」がいます。通常、両親がそろっていれば、元気なほうの親が担当し、主な役割としては、身体的なケアや精神的なケアを担います。

でも介護する親も高齢だとなかなか大変ですよね。

もちろん、すべてを1人ではやりきれません。できない部分を子どもがサポートしたり、プロの手を借りたりなど、みんなで役割を分担していくのです。この人たちもプロジェクトのメンバーなのです。主たる介護者の役割として、もう1つ「キーパーソン」と呼ばれる役割があります。

 

キーパーソンの主な役割は、外部との「調整・交渉・手続き」の窓口となり、家族間の意見のとりまとめをする人です。たとえば、介護サービスを利用する場合、申し込みや契約などの手続きが必要になります。またサポートする家族が複数いる場合も、外部との窓口は1つにしておかないと混乱するだけ。こういった役割は、必ずしも身近に暮らしている人がベストとは限りません。離れて暮らしている子どもでもできる役割なのです。

外部との交渉や調整は、普段仕事をしている子どものほうが向いていそうですよね。

親の介護で子どもがやるべきもう1つの役割として、親の介護を「マネジメント」していくことを提案します。

最初にお話しした通り、親も子どもも105歳まで生きる可能性があります。いつ終わるかわからない介護を息切れせずに、続けられるように、環境を整えてあげることが「マネジメント」の考え方です。

ヘルパーさんと一緒になって介護の現場に入り込むより、冷静な視点で介護がスムーズにいく環境を整えることが大切なのです。

 

 

まず、マネジメントの手始めとして、親は、何ができて何ができないのかを確認します。親ができないことを自分がサポートできないなら、手を出さずに代役=サービスや制度を探すようにしましょう。

子どもが離れて暮らしていると、日々の身の回りのお世話のために通うわけにはいかないからサービスを使うことは必須です。

適切なサービスや制度を探すためには、情報収集が不可欠です。介護保険制度を理解して、適切なサービスを受けられるように子どもがサポートしてあげましょう。

介護保険制度って言われても難しそうで理解できる気がしない! でも弱っている親より子どもが勉強して理解しておくべきですよね。

たとえば、親の体調が思わしくなく、歩行が難しくなってきた、ということで相談が必要な場合、親は説明に手間取るでしょう。子どもが、代わりに状況を説明して、適切な手立てを段取りする必要があります。親に代わって状況を理解して、適切なサービスを受けられるように環境を整えていくことが「マネジメント」の役割です。

難しいと嫌がらずに、理解するように頑張りましょう!

 

『2025年問題で日本は崩壊する?もう来る将来や対策を徹底解説!』

2025年問題とは」

2025年問題とは、1947年から1949年までの間に出生した、いわゆる「団塊の世代」の全ての人が75歳を迎えることにより、75歳以上の人口が急増することで起こると予測されている、一連の問題のことをいいます。

具体的には、介護費用や医療費の増大、地域の担い手不足などが挙げられます。

つまり、2025年問題とは人口構造の変化により発生が懸念されている社会問題のことです。

 

2021年、1,500万人程度の後期高齢者人口が、2025年には約2,200万人まで膨れ上がり、全人口の 4人に 1 人は後期高齢者となって、前期高齢者(65歳以上74歳未満)を含めた高齢者の割合は、全人口の30%を超えると推計されています。

 

その結果、医療や福祉などに費やされる社会保障費が膨大になり、国家財政上の大きな問題になると指摘されています。

人口構造の変化によって、2025年問題として以下のような問題が生じることが懸念されています。

 

【労働力の不足】

2025年問題によって生じる問題の中で、最も深刻と言われているのが「労働力不足」です。パーソル研究所のレポートによれば、2025年には、583万人分の労働力が不足するとされています。

日本では1970年に高齢化率が7.0%を超えた時点から「高齢化社会」に突入しており、その後2007年には高齢化率が21%以上となり「超高齢社会」を迎え、現在では高齢化率は28%を超えています。

高齢者が急増していく一方、若い世代の人口や出生率は減少を続けており、労働資源不足は今後さらに深刻なものになると予測されています。

最も労働力不足が深刻な産業は、情報通信・サービス業で482万人の不足が予想されており、次いで、卸売・小売業の188万人の不足という見込みです。

現在でも卸売・小売業では、アルバイトを確保できないという理由から閉鎖に追い込まれる店舗がみられるなど、既に人手不足が深刻化し、今後さらにその傾向は加速する見通しです。

【医療における医師不足

医療における医師不足も深刻な問題です。ここでは、医師の数そのものが問題となっているというよりも、必要なところに医師がいないことが問題です。

地方では、医療を受けたくても設備が無かったり、医師がいなかったり、救急患者が病院をたらい回しにされる可能性があります。

重篤患者の受け入れや難しい処置、精密検査はおのずと病床のある大病院に限られます。

医療業界における需要と供給のバランスが崩れ、病院数の減少や医師不足といった問題が生じる恐れがあります。

【介護における介護の問題】

2025年問題を前にして、団塊の世代と言われる約800万人の人々が、徐々に介護サービスを必要としてきています。

現に、要介護・要支援認定者数は2000年には218万人だったのが2017年には622万人と、ここ十数年で約3となっています。

団塊の世代の高齢化によって、介護を必要とする高齢者が今後さらに増加することが予想されています。

介護を必要とする高齢者が増えれば介護サービスのニーズが高まりますが、サービスを提供する事業所および、そこで働く介護職の人員不足が深刻となっているのが現状です。

社会保障費の増大】

社会保障給付費は、高齢化に伴って急激な増加が見込まれます。特に、医療・介護分野の給付はGDPの伸びを大きく上回って増加していきます。

団塊の世代全員が75歳以上となる2025年には、日本のGDP費でみると、介護費で1.4倍、医療費で1.3倍程度の社会保障給付費が必要であるとされていますが、20歳から64歳の現役世代が大幅に減少する2040年にはさらに増加し、介護費で1.7、医療費で1.4社会保障給付が必要であるとされています。

【空き家・マンション問題】

2025年には3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上となり、必然的に相続の件数が増えることが想定されます。

65歳以上の高齢者のいる主世帯の8割以上が持ち家に居住しており、高齢者単身主世帯の持ち家割合は65%以上です。相続が発生した際に、相続人が引き継いで居住できない状況の場合、売却を検討するなど住宅の活用を検討する必要があります。

しかし、住宅需要の高い30代~40代の人口は減少傾向にあるため、買手が見つからず空き家が増加、それによって不動産の需要と供給のバランスは大きく崩れ、不動産の価格への影響も懸念されます。

それにともなって、マンション価格の値崩れも発生する可能性があります。

 

 

2025年問題と2035年問題の違い」

2035年問題とは、団塊の世代1947年)の高齢化が進み、日本全体の人口の1/3を高齢者が占めるようになる未来のことです。

2025年問題と比較すると、高齢者の増加により、医療負担がより拡大することが見込まれます。

実際、2035年には295万人の介護職員が必要とされるのに対し、供給は227万人となる見込みで、人材の需給のギャップは68万人となることが、経済産業省の報告書で説明されています。

2035年問題に立ち向かうためには、

  • AI/IOTを活用した技術革新による労働力の補完
  • 人材の育成
  • 女性の再雇用

などの対策が必要になると言われています。

 

2025年問題と2040年問題の違い:人口減少と医療」

2040年問題とは、国民の4人に1人が75歳以上の超高齢化社会を迎える未来のことです。

おおよそ2,500万人が75歳以上を迎え、それを支える20歳〜64歳は約5,500万人まで達する見込みです。

つまり、2040年に日本は、世界が未だかつて経験したことのない「超高齢社会」を迎えることになります。

このため、2025年よりも人口減少は進み、医療の需給バランスは崩れる見込みです。

2040年問題の解決策としては、

  • 2025年問題の解決
  • 2035年問題の解決

を成し遂げる必要があります。

 

2025年問題では何が起こる?」

2025年問題の社会的影響は以下の通りです。

  • 企業
  • 企業業績
  • 従業員の採用
  • 医療・介護業界

それぞれ詳しく解説します。

【企業の労働力不足に待ったなし】

日本国内で人口が減少していくと、労働力自体も減少していくため、企業も労働力を確保していくことが厳しくなります。

特に団塊の世代が引退すること、バブル崩壊後の長期不況期において若年労働力を十分に採用してこなかったことによる、「事業や技能の継承」「若年層の採用などの人材確保」といった課題が目立つようになってきました。

つまり、2025年問題が企業にもたらす影響で最も大きいのは労働力不足です。高齢化社会が進めば、労働人口よりも非労働人口の方が多くなります。

【企業業績の低下に歯止めが効かなくなる】

就業者は2005年の6356万人から、2015年には6274万人、2025年には6091万人と減少していくことが予想されます。

一人当たり所得の平均も、2005年から2025年にかけて、370万円、355万円、341万円と減少し、社会の活力は失われていくでしょう。2015年と同水準の活力を維持するには、多様な人材の就労が必要です。

労働市場の構造が過去のままであれば、2025年にかけて就業者は減少し、所得は低下し、それらを乗じた労働総所得も減少し、その結果、日本の国内経済は衰退していくと考えられます。

【従業員の採用競争は激化する】

少子化の影響を受け、2025年に向けて1524歳の就業者は減少を続けることが予想されています。このように減少が続く中でも、企業は新卒者を採用し続けなければなりません。

なぜなら、企業を実際に動かしていくのは人だからです。したがって、2025年にかけて、学卒者の争奪戦は一層強まると予想されています。

【医療・介護業界の受給バランスが崩れる】

2025年問題は、医療・介護業界にも多大な影響を与えます。元気な高齢者が増えているとはいうものの、高齢になればなるほど免疫力は低下するものです。

つまり、人口全体で見たときの疾患リスクが高まるとも言えます。それゆえ、超高齢社会が進むにつれて医療・介護の需要は必然的に高まっていくのです。

しかし、少子高齢化によって労働力の減少はこの先ますます進んでいきます。医療・介護業界も例外ではなく、将来的に医師や看護師、介護従事者が減っていくことは避けられません。

つまり、社会保険と同じく、需要と供給のバランスが崩壊してしまう可能性があるのです。このバランスをどう保っていくかが、医療・介護業界が解決していかなければならない大きな課題の1つです。

これに加えて、2025年問題によって医療業界が直面するとされているのが、医療費の問題です。高齢者の増加によって患者の数が増えれば、医療費の増加も避けられません。

厚生労働省の推計では、医療費の保険給付金額は、2025年には54兆円になると試算されており、2019年よりも約12兆円も増えることになります。

現在、高齢者の医療費自己負担額は原則として1割に設定されており、残りは社会保障費によって補われています。社会保障費の財源は、我々が支払っている税金です。

つまり、医療費は今後も増える一方であるのに対し、労働人口が減り徴収できる税金が減ってしまえば、必然的に社会保障費を確保することが難しくなってくるはずです。

医療業界が直面する医療費の問題に加え、介護業界の介護費用の問題もあります。

高齢者が比較的軽度の要介護度の場合は、基本的には同居する家族が面倒を見ることで済むかもしれませんが、認知症や寝たきりの高齢者が増えると、特別養護老人ホーム(特養)の需要も高くなり介護費用も膨れ上がります。

2025年問題で看護師は余るのか】

「病院看護師」バブルが2025年に到来する。そのような言葉を耳にした方も多いかもしれません。

これは、2014年の調査を元に試算された結果で、7人の入院患者に1人の看護師を配置する「71病床」を減らす方針を政府が発表したことにより、病院内の看護師(急性期病床に関わる)が余る可能性があることを示唆したものです。

つまり、訪問介護の看護師の需要が今後増加することで、病院内(急性期病床)に残る看護師の競争は激化する可能性がありますが、全体の看護師の数として看護師が余ることはないと予測されます。

 

2025年問題に対する対策」

こうした2025年問題に対策を打っていないのかと言われるとそうではありません。

政府・企業・各医療団体はさまざまな施策を打っています。

ここからは、実際にどのような対策が講じられているのかを解説します。

 

【政府】

公費負担の見直し

これまでは、低所得者の負担軽減や調整など、3年に一度おこなわれる介護保険法改正時に保険料の見直しがされてきました。今後は、国民健康保険などの保険料について見直しが検討されています。

保険料の見直しを進めていくと、所得の低い人については、行政サービスを受けられなくなる可能性があるため、政府は世帯ごとの所得に応じ、低所得世帯は軽減を、高所得世帯は保険料の引き上げで公費負担の公平化を図ろうとしています。

介護人材の確保

介護人材は、高齢者を支える「地域包括ケアシステム」のための最も重要な基盤です。

政府はこのシステムの構築のため、2025年問題に備えた介護人材確保に向けて以下のような施策を進めています。

 

1.介護業界への参集促進

  • 介護業界への就職を考えていない層向けの情報発信、交流
  • 介護を就職の選択肢と考えている層向けの職場体験の実施や実習プログラムの充実
  • 一時的に介護から離れている介護福祉士向けの届出制度の創設、再就業支援

2.労働環境・処遇の改善

  • 新たに介護職に就職した人材の早期離職防止
  • 結婚・出産・育児によらず生涯働き続けられる環境整備
  • 労働環境、雇用管理の改善
  • 将来の見通しを持って働き続けるためのキャリアパスの整備
  • 介護ロボット導入による腰痛対策や業務負担の軽減

3.介護人材の資質向上

  • 多様な人材層に応じた役割や教育、キャリアパスに応じた施策の実施
  • 多様化する介護ニーズに応じた介護福祉士の教育プログラムの確立、役割の明確化
  • 介護福祉士の資格取得方法の一元化

地域包括ケアシステムの構築

政府は、医療と介護を病院や施設等で行うものから在宅で行うもの、つまり住み慣れた地域の中で最後まで自分らしい生活ができるようにと、地域の包括的な支援・サービス提供体制「地域包括ケアシステム」の構築を推進しています。 

厚生労働省は、2025年を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を開始しています。

今後、より高齢化社会が進めば、認知症高齢者の増加が見込まれることから、認知症高齢者の地域での生活を支えるためにも、地域包括ケアシステムの構築が重要です。

また、市町村では 2025年に向けて、3年ごとの介護保険事業計画の策定・実施を通じ、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じた地域包括ケアシステムを構築しています。

 

【企業】

各企業において2025年問題に対応するためには、これまで働いていなかった方々、高齢者、女性なども含め、誰もが意欲と能力に応じて働ける職場環境を整備することが重要です。

こうした職場環境の整備により、有能な人材の職場への定着や新たな人材確保を容易にし、企業の競争力を高めることも期待できます。

 

公的支援の活用で事業承継を進める

高齢化社会の到来を前に、企業としても労働力の確保に努める必要があります。しかし、労働力を確保しようにも、それができないという企業も少なくありません。そんなときは、公的支援制度を活用することが重要です。

高年齢者の雇用機会の確保に資するため下記制度を積極的に活用することにより、事業主による高年齢者の雇用の場の確保が進められています。

  • 定年引上げ等奨励金(65 歳以上への定年引上げ、希望者全員を対象とする70歳以上までの継続雇用制度の導入又は定年の定めの廃止等を実施した中小企業事業主等に対して助成する)
  • 中高年トライアル雇用奨励金(中高年齢者(45 歳以上)を試行的に受け入れて雇用する事業主に対して、試行雇用奨励金を支給(1人当たり月額4万円・支給期間最長3か月)する)
  • 特定求職者雇用開発助成金(高齢者等をハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に対して賃金相当額の一部を助成する)

高齢者の雇用維持で人手を確保

企業の労働力不足を補う一つの方法は、高齢者の雇用を維持することです。高齢者の雇用就業対策の1つとして、企業・企業グループ内での65歳までの雇用を確保することが急務です

企業・企業グループ内での 65 歳までの雇用の確保は、高年齢者雇用安定法に基づき、定年と継続雇用を中心とする高年齢者雇用確保措置について、一定期間努力義務規定をおいた後に義務規定が設けられ、着実に進展してきています。

離職防止で人材流出を防ぐ

仕事と家庭との両立や自己啓発等が可能となるような取組を行うことにより、有能な人材の職場への定着、人材確保を可能にし、企業の運営の効率性を高めることができます。

たとえば、育児・介護のための短時間勤務制度の導入、短時間正社員制度の導入、在宅勤務制度の導入などが考えられます。

育児・介護休業については、雇用保険被保険者である従業員本人に対する給付制度があるほか、健康保険・厚生年金保険の被保険者が一歳六ヶ月に達するまでの子を養育するための育児休業

又は一歳から三歳に達するまでの子を養育するための育児休業の制度として休業を取得する期間については、事業主の申し出により会社負担、本人負担ともに保険料が免除になります。

また、年金額の算定に当たっては、保険料拠出を行った期間と同様に取り扱われることになります。

さらに、育児中の従業員の仕事と家庭の両立支援については、事業主に対し次のような各種助成制度があるため、積極的な活用によって人材流失を避けられます。

生産性向上で省力化

ICTによる生産性向上に向けた企業の取組みは、古くはメインフレームによる業務システムの構築に始まり、その後のクライアントサーバシステムの普及を経て、現在ではクラウドコンピューティングを活用した業務効率化が業種を問わず広く行われています。

ICTは、企業活動の効率性向上(プロセス・イノベーション)の最も一般的なツールであり、供給面からみた経済成長の原動力でもあります。今後も、たとえば、ビッグデータの分析等を通じた生産過程や流通過程のさらなる効率化が期待されています。

さらに、テレワークのようなICTを活用した就業形態は、育児中の女性や高齢者、障碍者などが、多様で柔軟な働き方を選択することを可能にし、労働参加率の向上にもつながると期待されています。

また、ICTの進歩は雇用に求められるスキルを大きく変えてきており、これからも大きく変えていくと予想されることから、早期のICT教育等を通じて、将来的なスキル変化に対応できる人材を育てていくことが重要です。

 

【医療・介護業界】

医療・介護業界でも対策が講じられています。

 

医療・介護制度の見直し

医療・介護サービスの需要の増大・多様化に対応していくためには、患者それぞれの状態にふさわしい、良質かつ適切な医療を効果的に、そして効率的に提供する体制を構築する必要があります。

このため、医療介護総合確保推進法では、病床の機能の分化・連携を進めるとともに、地域医療として一体的に地域包括ケアシステムを構成する在宅医療・介護サービスの充実を図る制度改正が行われています。

 

人手不足の解決

日本では、地域の医師確保等に対応するため、2008年度より医学部入学定員を増員しています。さらに2010年度からは、卒業後に特定の地域や診療科で従事することを条件として奨学金を支給する仕組み(地域枠)等を活用した医学部入学制度も始まっています。

また、現在は都市部に比べ山間部・へき地の医師数が極めて少ないといった医師の地域的な偏在、産科・小児科等の診療科を中心に医師不足が深刻であるなど医師の診療科間の偏在の問題が生じています。

こうした課題を解決するため、大学との緊密な連携を図りつつ、医師のキャリア形成上の不安を解消しながら、地域枠の医師などを活用して、地域の医師不足病院の医師確保の支援等を行う「地域医療支援センター」の各都道府県への設置を推進しています。

また、臨床研修制度では、地域医療の安定的確保の観点から、研修医の地域的な適正配置を誘導するため、2010年度の研修から、地域医療の研修を一定期間(1か月)以上行うことを要件としています。

併せて、都道府県ごとに人口や医師養成数、地理的条件などを勘案して研修医の募集定員の上限を設けるなどの措置もとられています。

 

 

少子高齢化社会でのAIの活躍可能性」

少子高齢化社会でのAIは以下3分野での活躍が期待されています。

 

【企業におけるAIの活躍可能性】

AIの普及によって想定される雇用への影響について、社会的なコンセンサスが得られていると考えられるものは、人工知能AI)が生み出す業務効率・生産性向上と新規業務・事業創出の2つの効果と、雇用の基礎を構成するタスク量の変化です。

人工知能AI)が導入される職種のタスク量は減少する一方で、人工知能AI)の新規業務・事業創出効果としては「人工知能AI)を導入・普及させるために必要な仕事」や「人工知能AI)を活用した新しい仕事」が創出され、新たな職種のタスク量が増加することが見込まれます。

【介護業界におけるAIの活躍可能性】

介護施設では、施設入居者の状態を常時把握できていることが望ましいものの、介護スタッフのリソースには限界があります。そこで、センサーと連携したAIシステムを用いることで、入居者の体温や心拍数、位置情報などを常に把握するような取り組みがすでに行われています。

また、施設入居者に関する情報をもとにした介護プランの予測・設計も、AIの活用が期待される分野です。最適な介護プランを提案することがAIによって実現できれば、介護スタッフは介護業務そのものに集中できるようになります。

介護スタッフの負担軽減はもちろんのこと、介護の質が向上することで、入居者や家族の満足度向上にもつながることが期待されます。

【医療業界におけるAIの活躍可能性】

患者の医療・健康に関する情報は、これまで医療機関保有することが中心となっていました。

患者の履歴や既往症、アレルギーの有無、血液型、処方薬などのデータが記載された紙媒体のカルテは、病院やクリニックのカルテ倉庫に保管され、受診時に取り出して医師が閲覧、記入することがほとんどでした。

しかし、医療情報の電子化を促進する「電子カルテシステム」などの医療情報システムの普及によって、医療機関と情報を共有したり、医療ビッグデータとしての利用・活用が可能となりつつあります。

また、CT(コンピューター断層撮影装置)やMRI(磁気共鳴画像装置)などの医療機器の進化とともに、医師は膨大な数の医療画像を診断しなければなりません。

現在、画像解説技術にAI技術を応用して、医療画像診断の効率化を促進することで、診察医の画像診断をサポートする技術も登場しています。

具体的には、CTMRI内視鏡の画像を分析して、画面上で異変と疑われる箇所を指摘することで病気の有無や進行の把握を支援します。

また、健康診断のデータや現在の治療内容を時系列的に分析し、その患者が将来発症する確率や発症後の進行を予測したり、介入の必要性を担当医に示したり、スマートフォンのアプリでユーザーに服薬や行動改善を働きかけたりすることも、AI技術を使うことで可能になります。

 

「まとめ 2025年問題を乗り越えよう」

2025年には、いわゆる「団塊の世代」が全て75歳以上となり、超高齢社会を迎えることになります。日本は、世界で初めて高齢化が進んだ社会経済を経験するのです。

こうした社会環境のなかで、国民一人一人が、医療や介護が必要な状態となっても、できる限り住み慣れた地域で安心して生活を継続し、その地域で人生の最期を迎えることができる環境を整備していくことは、喫緊の課題となっています。

『日本の少子高齢化の原因と問題点』

少子高齢化とは出生率の減少による少子化と高齢者の増加による高齢化の2つが組み合わさった言葉で、簡単に言えば子どもが少ないのに高齢者が多い状態のことを言います。

日本は1971年(昭和46年)~1974年(昭和49年)の第二次ベビーブーム以降ほぼ毎年のように出生率が下がっており、第二次ベビーブームには2.14あった出生率も今では1.5を切っています。
また、高齢者と呼ばれる65歳以上の方の割合も年々増加しており、このまま少子高齢化が進めば2025年には日本の人口の3人に1人は高齢者になると言われています。

ここでは日本が少子高齢化になった原因と共に少子高齢化によって引込される問題点についてもご紹介してきます。

 

少子高齢化の原因」

少子高齢化は冒頭でも記載したように少子化と高齢化の2つが原因となって起きています。ここでは少子化と高齢化の主な原因についてご紹介していきます。

 

【未婚率の増加】

少子高齢化のうちの少子化が進んでいる原因には未婚率の増加があります。
未婚率は男女ともに増加傾向にあり、現在は男性の20%以上、女性の15%以上が生涯未婚のままだと言われています。つまり、男性の約5人に1人、女性の約6人に1人が生涯結婚をしないと言うことになります。

 

【晩婚化】

上記に続き少子化が進む原因には晩婚化も大きく影響しています。
日本の平均初婚年齢は1970年には男性が26.9歳、女性が24.4歳であったのに対して現在は男女ともに30歳以上となっており晩婚化も加速しています。
晩婚化は家庭が持つ子供の数が減少しやすい傾向にあるだけでなく、子どもを持てない家庭が増える傾向にあり、少子化の原因となっています。

 

【結婚や子どもを持つことに対する価値観の変化】

結婚や子どもを持つことへの価値観が変化してきていることも少子化の原因となっています。
一昔前までは結婚し子どもを持つのが当たり前と言った考えが一般的でした。しかし現在は「独身生活の自由さ」や「結婚をしないことへの偏見の減少」などから男女ともに結婚しない選択をする方も増えています。

 

また、独身に限らず結婚をしても子ども持たないと言った選択をあえてする方も増えていると言われています。経済的な理由はもちろんのこと、「子育てをしたくない」、「自由がなくなる」などの理由から子どもを持たない方もおり、出生率の減少へ影響しています。

 

【女性の社会進出】

女性の社会進出も少子化に少なからず影響し原因の1つと言われています。
「女性の社会進出」つまり女性の就職率の上昇により育児と仕事の両立が難しくなっていることや経済的な自立により最初に紹介した晩婚化や未婚率の上昇へと繋がり出生率の減少の原因ともなっています。

 

【出産や育児などの環境の未整備】

上記の女性の社会進出が少子化の原因の1つであるものの、出産や育児などの環境の未整備も少子化の原因であると言えます。
イクメンと言ったように育児などに参加する男性も増加傾向にあるものの、その数はまだまだ多いとは言えません。
また、会社でも産休や育休と言った休暇制度があるものの、中小企業ではまだまだ取得が難しいと言った職場も少なからず存在しているが現状です。
さらに、出産や育児によって一旦は離職した女性の再就職が難しいことや核家族化の増加により子育てが難しくなっているのも少子化に大きな原因となっています。

 

【子育てへの金銭的な負担】

1人の子どもを私立大学に入学させ卒業させるまでには2000万円以上かかるといわれています。仮に費用の安い公立であっても1000万円以上かかると言われ、2人になれば単純計算で2000万円~4000万円以上かかることになります。
現在は出産すると貰える出産手当金や子どもが18歳になるまで貰える児童手当などがありますが、その支給金額は決して多いとは言えず、家庭への経済的負担は大きく出生率の低下の原因にもなっています。

 

【医療の発展により平均寿命が伸びた】

医療の発展により日本の平均寿命は伸びています。1950年の平均寿命は女性が61.5歳、男性が58.0歳だったのに対して50年後の2000年には女性が81.9歳、男性が77.7歳まで伸びています。また、さらに50年後の2050年には女性が90.2歳、男性が83.5歳まで平均寿命が伸びると言われています。
そのため、高齢化の割合が今後も増加していくと言われています。

 

【健康への意識の高まり】

上記の医療の発展に加えて健康への意識の高まりも原因の1つと言われています。
普段の食生活や定期的な運動などにより生活習慣病への予防を行うことも平均寿命が伸びている一つの要因と言われています。
また、サプリメントなどにより不足している栄養素の補給の他にも健康診断や人間ドックなどを受ける方が増えたり、喫煙者の減少なども平均寿命を伸ばしている要因と言われています。

 

都心部へ人口が集中】

UターンやIターンと言った田舎への就活・転職を行う方がいたり、地方への移住を行う方が増えているとは言われているものの、東京や大阪、愛知へ人口流入は止まりません。
特に東京圏への人口集中は止まらずと東京、神奈川、埼玉、千葉の一都三県で日本の総人口4分の1以上が暮らしています。

しかしそういった地域は地価・物価が共に高いため生活にかかる費用は地方に比べて高く、経済的な理由から出生率は減少しやすく少子化の原因となります。

 

【進学率の増加】

高等学校への進学率は1978年(昭和53年)以降90%を超え、今では95%以上を推移しています。また、大学の進学率も多少の上下はあるものの男子が50%以上、女子が45%以上となっています。
つまり高校へは20人中19人が進学し、大学へは21人が進学しており、短大や専門学校を含めればさらに多くの人が高等教育を受けています。

 

しかし高等教育を受けることが当たり前となれば、その分、教育費もかかるため子育てにかかる総額が高くなります。そのため高等教育を視野に子育てを計画する方が増えることで、結婚や出産に躊躇する方も増え、出生率の低下の原因となります。

 

少子高齢化の問題点」

上記で紹介したような様々な原因が重なり合い日本は少子高齢化となっています。
ここからは少子高齢化によって起きる問題点についてご紹介していきます。

 

【年金制度の崩壊】

少子高齢化によって最も問題視されていると言っても過言ではないのが年金制度。
年金は現在働いている現役世代から国民年金や厚生年金と言った名目などで徴収した保険料を年金として高齢者に支払われています。
昔は現役世代が多かったことから年金制度はうまく回っていましたが、少子高齢化によって現役世代の減少と高齢者が増加したことにより徴収した保険料だけでは賄えなくなってしまっています。

 

現在は現役世代の年金保険料率を引き上げし徴収する保険料を増やしたり、年金を支給する年齢を引き上げたり、支給額を減額することで年金の支出学を減らし運用されていますが、いつかは限界を迎え年金制度が崩壊すると言った問題にまで発展する可能性もあります。

 

【医療費の高騰】

高齢者は現役世代に比べて4倍の医療費がかかっていると言われています。
日本は社会保険によって自己負担額は少なくてすむようになっています。年齢によって異なりますが1割~3割の自己負担額で病気や怪我の治療を受けることができます。

しかしこの社会保険制度も現役世代からの徴収した保険料によって現役世代もちろん、リタイアした高齢者も賄われています。そのため、そのまま少子高齢化が進めば年金と同様に保険料が引き上げられたり、自己負担額が増加するなどの問題へと発展する可能性があります。

 

【一生働く時代へ】

2004年に改正され2006年に施行された高齢者雇用安定法により65歳までの継続雇用が義務化され、さらには近い将来には70歳にまで引き上げられると予想されています。

継続雇用年齢が引き上げられる原因にはこれまで紹介した少子高齢化によって起きる問題を回避するための対策として行われていますが、今後さらに引き上げられるようであれば様々な問題が発生すると言われています。

例えば建築や介護と言った肉体的な負担の大きい仕事は高齢者にとって継続して働くことが困難なだけでなく、別の仕事につくと言っても新しいキャリアを1から構築していく必要があり、満足のいく給与を貰えるとはかぎりません。
また、ITと言ったような技術革新が早く常に新しい技術を身につけるような業務も高齢者には難しいと言われています。
さらに、退職せずに今の職場に残る高齢者が増えればポストが開かず若い世代へのチャンスも減少する可能性が出てきます。

 

【経済成長率の低迷】

少子高齢化によって現役世代の数が減れば必然的に経済成長率も低迷していきます。
経済成長率が下がれば、上記の年金制度の崩壊と言ったことにもなりかねませんし、雇用の低迷、給与や福利厚生などの雇用条件の低下と言った問題へと発展する可能性があります。

 

【経済成長率の低迷により先進国から発展途上国へ】

2050年には日本は少子高齢化などの問題により現在の先進国から発展途上国へ格下げされると予想されています。
発展途上国となれば国際競争力や国内経済の衰退していく可能性が高くなり、国民一人ひとりの生活水準が低下してしまいます。

 

【市区町村の統合】

 

全国的にこのまま少子高齢化が進めば地方は成り立たなくなり市区町村の合併の動きはさらに加速していくと予想されます。

合併は「公共の施設が統一され公務員数を減らせる」「予算が増え大きな公共事業が行えるようになる」などメリットがある反面、「その地域に住む人達の声が反映されにくくなる」、「公共施設が統一されることで一部の住民は距離が遠くなり不便になる」と言った問題が発生する可能性があります。また、同じ地域内で格差が生まれるなどの問題も発生する可能性があります。

 

医師不足

日本の医師免許の取得社数は年々増加傾向にありますが、OECD経済協力開発機構)によると人口当たりの臨床医の数はメキシコ・韓国・ポーランドに続き日本はワースト4位と最低レベルに位置し、12万人も医師が不足していると言われています。

今後、病院の利用回数が多くなる高齢者がさらに増えれば医師不足は現在よりもさらに深刻な問題となり「病気やゲガをしても治療を受けられない」、「入院を断られる」と言ったようなことにもなりかねません。

 

【介護業界の人手不足】

現在でも介護業界の人手不足は社会問題となっており、一説では介護施設全体の6割で人手不足が発生し10万人の介護職員が足りていないと言われています。

このまま少子高齢化が進めば介護職員の不足は37万人まで拡大すると言われています。そのため満足な介護が受けられないばかりか、高齢者が高齢者を介護することが当たり前と言った問題になってしまうかもしれません。

『日本経済は今後どうなる?見通しや影響のある出来事』

日本で暮らしている人のなかには、日本経済は今後どうなるのか気になる人もいるでしょう。2022年の日本経済は、新型コロナウイルスのオミクロン株の感染拡大やウクライナ情勢、記録的な円安などさまざまな出来事に影響され、大きく揺れ動いています。

このコラムでは、日本経済が今後どうなるかの見通しを解説。内容を参考にして、仕事やビジネスに活かしましょう。

 

 

「現在の日本経済の状況」

20221月~3月の実質GDP成長率(2次速報値)はー0.1%(年率ー0.5%)でした。前期の202110月~12月と比較するとややマイナスに転じています。GDP成長率とは、国内で生産されたモノやサービスの付加価値が前期と比較して何%増えたかを示す数字です。種類は実質GDPと名目GDPとがあり、物価の変動を差し引いた「実質GDP成長率」が国の景気を測る数値としてよく用いられます。国内の生産量=GDPが上がると景気が上向いている、下がると景気が下向いていると判断できるでしょう。

マイナスになったのは、物価上昇や円安により輸入額が増えたことが影響していると考えられます。また、新型コロナウイルスのオミクロン株流行拡大があり、外出控えや消費控えがあったことも要因の一つです。

 

 

 

「今後の日本経済への影響が予想される出来事」

ここでは、今後の日本経済への影響が大きいと考えられている出来事について解説します。今後の日本経済がどうなるか気になる方は以下の出来事についての情報をよくチェックしておきましょう。

 

【ロシアによるウクライナ侵攻】

2022214日、ロシアはウクライナに軍事侵攻を開始しました。欧米諸国はロシアの行動を非難し、経済制裁を課しています。日本政府も主要国の措置に沿って、貨物の輸出などの禁止措置を講じました。これにより、ロシアから多く輸入していた品物の供給が不安定になり、価格の高騰や供給不足に陥っています。

特に影響が大きいのは液化天然ガスや石炭、レアメタルの供給です。これらのエネルギー関連商品は、高い割合をロシアからの輸入に頼っている状況でした。エネルギーの供給不安はさまざまな方面に影響があります。また、ロシアからは木材や小麦など生活に密接に関係する物品も多く輸入していたため、今後の消費者への影響は避けられません。ロシアのウクライナ侵攻は日本経済の今後に大きく関わってくる出来事といえるでしょう。

 

【世界的な物価上昇】

世界的な物価上昇は、日本経済の今後に大きな影響を及ぼします。各国では新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の落ち込みから回復しつつあり、急増したモノやサービスの需要に供給が追いついていない状況です。このような状況は「供給制約」といい、物価の上昇(インフレ)に直結します。また、先述したウクライナ情勢の影響も加わり、さまざまな物品の価格が次々と上がり始めているのです。

日本は諸外国と比較すると物価の上昇が緩やかな国とされていました。しかし、2022年に入ってからはガソリンや飲食料品、電気などあらゆる物・サービスが次々と値上げされており、今後もインフレは加速していく見通しです。値上げは国内消費を減少させるだけではなく、企業の生産コストを引き上げ業績を悪化させます。企業の業績が悪くなると国民の雇用や賃金にも影響するため、景気の後退に繋がる可能性があるでしょう。

 

アメリカの金融引き締め】

202254日、アメリカ経済をコントロールする中央銀行の役割を持つ、連邦準備制度理事会(通称:FRB)は大幅な金融引き締めに踏み切りました。金融引き締めとは、政策金利中央銀行が一般銀行にお金を貸し出す際の金利)を引き上げることです。金融引き締めは市場に流れるお金を減らし、物価の上昇を抑える目的があります。一方で、景気の成長をストップさせることにも繋がるため、経済に影響を及ぼす判断といえるでしょう。

世界経済に大きな影響力を持つアメリカで経済的な混乱が起こると、当然日本の景気にも関係します。FRBの金融政策は経済の状況を見て変動するため、今後どうなるか常にアメリカの動向をチェックしておきましょう。

 

【記録的な円安ドル高】

日本は2022年に入ってから円安水準が続いています。円安ドル高とは、日本の円の価値がドルに対して相対的に下がっていることです。2022614日、日本の円相場は一時1ドル=135円台前半まで値下がりしました。これは、1998年以来の記録的な水準です。要因として考えられるのは、アメリカが金融引き締めに踏み切った一方で、日本が金融緩和(金利の引き下げ)の政策をとったことから発生する「金利差」です。

円安は、海外に輸出するモノやサービスの値段を安く設定できます。輸出産業が活発になるため、海外に市場を多く持つ大企業にとってはプラスに働く面もあるでしょう。一方、輸入品の値段が上がり、国内の消費の冷え込みに直結します。

 

新型コロナウイルスによる中国経済の低迷】

中国経済の低迷は、日本経済に大きく影響を及ぼします。中国の主要都市である上海市では、新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるため、20223月末より大規模な都市閉鎖(ロックダウン)が開始されました。この厳しい中国政府の判断は「ゼロコロナ政策」と呼ばれています。市民の自由な外出が禁止され、経済活動は低迷しました。6月に一旦解除されたものの、再度感染者は拡大傾向にあり、またロックダウンに入る可能性もあるでしょう。

中国随一の経済都市である上海市のロックダウンは「サプライチェーン」に影響し、日本経済にも大きく影響します。サプライチェーンとは、製品が製造され消費者の手に渡るまでの一連の流れのことです。ロックダウンにより中国に工場を置く日本企業は、部品や原材料を送ることができず生産をストップせざるを得なくなりました。新型コロナウイルスの感染が再び拡大すれば、今後も同じような混乱に陥る可能性が十分あるでしょう。

 

 

「今後の日本経済には明るい兆しも」

今後の日本経済には明るい兆しもあり、次期202246月の実質GDP成長率はマイナスからプラスに転じると予想されています。理由は、日本国内で新型コロナウイルスの感染者が減少傾向にあり、経済活動がコロナ前の水準まで回復することが期待されているためです。特に旅行やレジャー消費が大幅に伸びると予想されています。さらに、2022610日からは団体での外国人旅行客の受け入れが再開されたので、インバウンド(訪日観光客)需要による経済の活発化も期待できるでしょう。

 

 

「まとめ」

日本経済の今後は、物価の上昇や円安など不安材料はあるものの、新型コロナウイルスの感染が収まってきたことにより、明るい兆しも見え始めています。経済は日々変化しているため、こまめに状況をチェックし、今後の動きに注目していきましょう。

『親ガチャという言葉に怒る人が知らない“貧困家庭の悲惨すぎる現実”とは』

「親ガチャ」という言葉に込められた怒り

「親ガチャ」という言葉がTwitterトレンドに入るほど流行していたとき、興味があってワード検索をかけてみると、ネガティブな反応や嫌悪感を露わにしているつぶやきが非常に多かった。例えば「生んでもらった親に対して敬意がない」「親を『ガチャ』という言葉で否定するなんて、親が聞いたら悲しむ」という風に、親サイドの目線に立って考えている人たちによる意見が目立ったように思える。

 もちろん若者であっても、親が自分を生んで育て上げてくれたことに感謝し、今も良い関係を築けている人であれば「自分の親を『ガチャ失敗』などと例えるなんて」と、「親ガチャ」に対して拒否反応が出てもまったく不思議ではないだろう。

 私個人としては「親ガチャ」という言葉を好んでは使わない。しかしながら、世の中で起こっているさまざまな不平等を解決しようとするとき、なくては語れないのが「生まれ育った環境」についてだ。日本における(相対的な)貧困問題はまさにそのひとつで、自分が生まれた家庭、育った環境、親が持つ経済力や文化的資本、社会的資本、知的資本がそのまま子へと受け継がれ、大きく影響を与える。

 

 そうした背景を踏まえると、新型コロナ感染症による経済的打撃を受けた人たちを含め、多くの人々の注目が「自分の努力でどうにもしようがないこと」へと集まったのが今回の「親ガチャ」という言葉への共感・流行であり、2021年の象徴的なできごとであったと思う。

 

「自己責任論」最盛期から、衰退期へ

 とはいえ世間一般には「自己責任論」は支持されやすく、それが正しいかどうかはさておき、特に貧困問題については未だにメジャーな思想だと言える。

 このコロナ禍においても、生活困窮に陥った人たちの状況を報じるニュースには「普段から貯蓄などの備えをしておかなかったのが悪い」「収入が下がったり一時的になくなったくらいで生活が破綻するような職にしか就いていないのは本人の怠慢だ」というような批判のコメントが必ずと言っていいほど寄せられる。

 

 彼ら彼女らの言い分は大体が「自分はこんな不況の中でも努力して生き抜いてきた、だからそうできないのは努力が足りないせいだ」という生存者バイアスの典型的な例であり、「飢餓がなく義務教育を受けられる日本に生きている以上、与えられた環境は全員同じであるから、国内での不平等は起こりえない」と信じて疑わないのだ。

「自己責任論」を振りかざす人たちは、しばしば「貧困からのしあがった成功者」の話を引き合いに出そうとする。努力さえすれば、貧困家庭出身でも起業して高収入を得ることが可能だというのだ。ソフトバンクグループの孫正義氏やパナソニック創業者の松下幸之助氏、起業家の家入一真氏などがその好例である。確かに彼らはみな貧困家庭で育ったというバックボーンを持ちながらも、努力し、研鑽を重ねて「社会的成功」を得た人たちである。

 

 しかし貧困家庭に生まれた人たちのうち、一体どれくらいの人間が彼らのような成功を収められるだろうか。数十万人に一人いるかいないかの稀有な例を持ち出して、残りの「成功し得なかった」数十万人の存在に目を向けないというのは、あまりにも非現実的な論理ではないだろうか。

 

貧困の悪循環のなかでもがく人々

 人々の関心が「個人の責任」から「個人の努力でどうにもならない生育環境」へとうつることで、何が変わるか。固定化された社会的格差のなかでの自由競争主義に人々が異を唱え、改善を求めようとすれば、まずは格差是正のために政治的なテコ入れが不可欠であることに気が付く。

 貧困から脱して正常な循環プロセスに乗るためには教育、コネクション、金融資本が必要となるが、貧困家庭ではそもそもこれらの資本がない。例えば、親や親戚のなかに大学に通った経験のある人が一人もいない、地元のコミュニティ以外との交流を持たない、教育や仕事に投資する金銭的余裕がないために、貧困の悪循環から抜け出すことが実質不可能である。

 

 

「親ガチャ失敗」の子どもたちは政権を揺るがしうるか

 大学卒業とともに数百万円の借金を背負わなくては中流家庭以上の子どもと同等の教育を受けることができないこと自体がそもそも「教育格差」である。事実、貧困家庭に生まれた多くの子どもは高等教育を受けたくても、金銭的な理由で高校・大学進学をあきらめざるを得ない。

 

 そうした家庭に生まれ育った子どもに対して、よりによって文部科学大臣が「身の丈にあった受験を」と言い放ってしまう始末である。「社会的格差の責任」を子どもにまで押し付け、教育機会の均等を目指してこなかった国家や政治のあり方が正しいとは、到底思えない。

「親ガチャに失敗した」子どもたち、若者たちから世の中への不満が噴出するのは、当然の結果だと思う。子どもたちは親に不満を抱いているというより、生まれた時点で配られているカードでしか戦えない既存の社会構造に対して憤っているのではないか。

 これから先、既存の社会構造を破壊するか、資本を貧困層へ再分配する仕組みを作らないかぎり、どんどん国民の怒りは増幅されていき、政権を揺るがそうとする社会運動が過熱していくのではないか。そうすれば、いずれ政府は国民の声に耳を傾けざるを得ないタイミングがくるはずである。

 権威勾配の上の方にいる人たちが甘い汁を吸い続けるための政治が、いつまで通用するだろうか。

 

「若者に金がないのは苦労をしないから」と“若者の貧困”を自己責任論で片づける日本社会の勘違い

 

中年以降、50代以上の人たちと話をしていると、若者に金がないのは単純に贅沢をしているせいだ、あるいは努力が足りないからだと、本気で思っていたりする。自分が身を置いている恵まれた環境を客観視できずに「貧困=自己責任」といった固定観念を持つ人々はそう少なくない。

 

「バブル時代から100万円以上も平均年収が減少」

 

 30年前と比べると、現在、日本の平均給与は100万円以上も下がっている。貧困層は貧困のまま、かつては中間層と呼ばれていた人々まで「貧困化」してしまった。「失われた30年」では個人が貧しくなったのではなく、国自体が貧しくなっているのだから、若者が努力しようがしまいが、個人の努力レベルでこの社会的構造を変えることは不可能なはずだ。

 終身雇用制度が機能していた頃であれば、年齢が上がるとともに年収が右肩上がりに増えるのが一般的であったものの、安全神話が崩れ去った今はそうではない。本来なら結婚や子育てなどで経済的な負担が大きくなる30代になってもさほど賃金は上がらず、不安定な雇用によって将来への不安を抱える若者たちが結婚や出産に踏み切れない気持ちは、同じ理由で子供がいない私にも痛いほどわかる。

 

 30年前に若者だった世代からすれば、若者が子を産み、少子化を解消してくれなければ自分たちの老後の生活が保障されない不安は当然あるだろう。しかしながら「今の若者は努力もせず、欲もなく、結婚や子育てにも後ろ向きで社会に貢献していると言えない」といった不満があるとすれば、それは若者に向けるべきものではなく、不安定な雇用を生み出し、若者に投資してこなかった権力側に向けるべきものではないか。

 氷河期世代の引きこもり実態調査を数年前まで行わず、対策を講じるでもなく見て見ぬ振りを続けてきたツケが現在の状況に繋がっているのではないか。

 

「賃金は上がらず生活コストは増えていく一方」

 若者の貧困について言えば、賃金は上がらないのに、生活にかかる最低限のコストが増えていることも要因のひとつだろう。バブル期に比べて社会保険料は約2倍になり、消費税率も10%に達した。今やライフラインであり欠かすことができない通信費などの支出の増加により、都市部に暮らしている若者は、貯金もろくにできないほど可処分所得が目減りしている。

 

 このように書くと今度は「都市部に住もうと思うからいけない」と横槍が入りがちなので念のため付け加えておくと、現実問題、地元や田舎では仕事がなく、あっても選択肢が少ないため都会に出るのであって、若者たちは決して、都会に住みたいから後先考えずに都会で就職しているわけではないのだ。

「子供は欲しいけど、現実的に考えると正直厳しい。自分ひとりで生活するのもやっとの状況で、貯金も十分にできない。年金には期待できないと思い、老後のことを考えてNISAiDeCoを始めたけれど、今より収入が減ってしまったらそれも継続が難しいと思う」

 私と同世代である30歳前後の人に話を聞くと、やはりほとんどが将来への不安を少なからず抱えていて、特に子供を育てることに関しては「養える自信がない」と答える人が多い。東日本大震災やコロナ禍を経てさらに景気は悪化し、身近な人が失職することもあれば、突然収入が途絶えるケースも嫌というほど目の当たりにしてきた。特に、コロナ禍において真っ先に解雇されたのは非正規雇用者であり、その多くは女性や若者たちであった。

 

「車も家も子供も夢のまた夢の時代に……

 ここ10年ほどの間に、誰もが一寸先は闇、明日は我が身を経験して「貧困」が他人事だとは思えなくなったのは当然のことだと思う。

 そして今や共働きでなくては家計の維持は難しく、子育てをするならばそれまでにキャリアを積み重ねておき、出産後にスムーズに復職したいところだが、それもなかなか思い描いたようにはいかない。

 そもそも「結婚・出産適齢期である」と判断された女性は「どうせ辞めるだろうから」「産休の間、代わりを探すのが大変だから」とキャリアアップしづらいのが現状であり、たとえ本人に出産の意思がなくとも、適齢期の女性だからというだけで、同じ世代の男性よりも機会を奪われてしまう。

 

 たとえ出産後の復職が可能な環境であっても、保育所が見つからなければ働くこともできない上、民間の保育所であれば保育料が高額で、月収と変わらないほどかかることもあり、それではなんのために働いているのかわからない。こんな状況で、少子化が解消されるはずがないのは明白である。

 かつては当たり前のようにライフプランに組み込まれていた「結婚」「出産」「マイカー所持」「マイホーム購入」が、もはや「普通」ではない時代になってしまった。

「若者の貧困問題」とは言いつつ、実際は若者だけでなくすべての世代がこの問題の当事者であり、一部の人々を除いては誰もが突然、貧困に陥る可能性が十分にある今、自己責任論で問題を矮小化し、その責任を国民同士で押し付けあっている場合ではないだろうにと思う。